SETに準拠しつつ拡張
日本の複雑な商習慣を実現しようとした歴史的規格
日本の商習慣(ボーナス払い・リボ払いなど)に対応させようとしたシステムのことです。
ネット通販が始まったばかりの頃。
安全な決済を目指し、
日本独自の商習慣に対応しようとした「幻の規格」がありました。
現在は使われていませんが、
日本のECの歴史を語る上で欠かせない足跡です。
その歴史的背景を解説します。
- ページ更新日:1月16日
1.SECEの概要とベースとなった「SET」
SECEは、
官民連携の国家プロジェクト的な規格でした。
SECEは、1990年代後半に
国内の主要ベンダーが共同開発し、
通産省(現・経産省)やIPA(情報処理推進機構)の
事業としても推進された、
インターネット決済のための技術規格です。
そのベースとなったのが、
国際ブランドのVisaとMastercardが共同開発した
「SET(Secure Electronic Transactions)」という規格でした。
SETは非常に安全性が高い反面、
仕組みが複雑で導入のハードルが高い
という特徴がありました。
SECEは、このSET規格と整合性を保ちつつ、
日本市場向けの拡張仕様(Japan Option)
として検討されたものです。
2.開発の背景:日本の独自商習慣への対応
開発の動機は、日本独自の
多様な「支払い方法」への対応でした。
なぜ、
わざわざ日本独自の拡張仕様が必要だったのでしょうか?
それは、日本には欧米にはない、
独自のクレジットカード商習慣があったからです。
- ボーナス一括払い
- ボーナス併用払い
- リボルビング払い(リボ払い)
- 分割払い
オリジナルのSET規格は基本的に「一括払い」を
前提としており、これらの複雑な支払い方法に
対応していませんでした。
そこで、日本のEC市場でも
多様な支払い方法を安全に実現するために、
SECEが考案されたのです。
(※クレジットカード取引だけでなく、
銀行取引や証券取引向けの仕様も合わせて検討されていました)
3.なぜ普及しなかったのか?SET規格の課題
理想的な規格でしたが、
運用面で大きな壁に直面しました。
日本の商習慣に対応しようとした画期的な試みでしたが、
残念ながらSECE(およびベースのSET)は普及しませんでした。
主な理由は、システムが複雑すぎたことです。
- 利用者が専用のソフトウェア(ウォレット)を導入する必要があった
- 加盟店やカード会社のシステム改修コストが非常に高額だった
- 処理速度が遅かった
結果として、当時はセキュリティの高さよりも
「手軽さ・使いやすさ」が優先され、
より導入が容易な「SSL/TLS」による暗号化通信が、
インターネット決済の主流となっていきました。
4.現在の主流技術との違いと歴史的意義
規格は使われませんでしたが、その精神は今も生きています。
現在、SECEは使われていません。
今日の安全なネット決済は、
主に以下の技術の組み合わせで実現しています。
- TLS(SSL):通信経路を暗号化し、盗聴や改ざんを防ぐ技術。
- 3Dセキュア(本人認証サービス):パスワード等で本人確認を行い、なりすましを防ぐ技術。
特に日本のEC市場では、なりすまし被害対策として、
3Dセキュアの重要性が年々増しています。
SECEは普及こそしませんでしたが、
「ネット上で安全に、多様な支払い方法を実現する」
という課題に業界が真剣に取り組んだ
歴史的な足跡として評価されています。
5.まとめ
SECEは、日本のネット決済史の重要な1ページです。
SECE(Secure Electronic Commerce Environment)は、
インターネット黎明期に、
日本のベンダーや関連機関が中心となり、
SET規格に準拠しつつ
日本の商習慣に合わせた拡張を目指した技術規格でした。
ベースとなったSET規格の複雑さゆえに
実用化には至りませんでしたが、
その後の日本のEC市場の発展を陰ながら支えようとした
技術アプローチの一つです。
現在の便利なネット決済の裏側には、
こうした先人たちの試行錯誤の歴史があったことを、
記憶に留めておいても良いかもしれません。