仕組みの違いを解説!
投資前に知っておきたい債券の基礎
「債券」は大きく分けると、
『利付債』と『割引債』の2種類があります。
『利付債』と『割引債』の違い、
それぞれのメリットとデメリットを詳しくチェックしてみましょう!
2.利付債とはどういう債券?
3.割引債はどのような債券なの?
4.それぞれのメリットとデメリット
5.税金もきちんと考えないといけません
6.支払期日までに売却する時には?
7.まとめ
- ページ更新日:12月11日
1.そもそも債券って?
「債券」とは、
国や企業などが資金を借りるために発行する有価証券のことです。
決められた額面金額を請求できる権利があり、
100万円の債券を所持していると、
その支払期日(償還日)になれば、
100万円は必ずその時点での所有者の元に入ります。
つまり、
2030年3月31日が支払期日の100万円の債券を所持していると、
その2030年3月31日になれば、
それと引き換えに100万円を手にすることができるという訳です。
◉「債券」の購入は投資になります!◉
「債券」は原則的に購入して運用するものです。
一番有名なのは「国債」で、
安定した金利が望めることに加えて、
日本国政府による元本支払い能力の高さ(信用度)があることから、
定期預金よりも少し高めの利回りを狙える商品として利用されることもあります。
債券には「利付債」と「割引債」がありますが、
その中でも国債は「利付債」の代表的なものです。
国債はリスクが極めて低い為、
これから説明する一般的な社債(企業が発行する債券)とは、
多少リスクの度合いが違うものだと考えてください。
投資になる以上、
債券の購入には少なからずリスクが存在します。
国債を除いては原則的に元本保証(絶対に損をしない保証)は無く、
そのリスクの代わりに、
銀行預金よりも高い金利を得られる仕組みになっています。
2.「利付債」とはどういう債券?
「利付債」とは、
その名の通り、
その債券を持っていることで定期的に「金利(利子)」が得られる債券のことです。
例えば額面が100万円で、
金利が年利2%という利付債を所持しているとします。
支払期日までの間、
1年ごとに年利2%に当たる2万円の金利を受け取ることが可能です。
「利付債」は債券の額面金額での購入が原則です。
100万円の利付債を購入する際にはそのまま100万円が必要になり、
支払期日まで定期的な金利収入が期待できます。
◉利益はその都度で受け取ることができます!◉
利付債の金利は、
その支払日(半年ごとや1年ごと)の度に受け取れます。
上の例では1年ごとに2万円が受け取れるということになり、
これが利付債を所持する一番のメリットです!
また、
債券は額面や利率があらかじめ決められているものなので、
定期預金の複利運用とは違って、
この受け取った金利分が勝手に額面に上乗せされることはありません。
◉比較的安定しています!◉
利付債の発行元(企業など)は、
その額面の債券を買ってもらう(=投資家からお金を借りる)ことで、
そのお金を事業などに有効利用できます。
支払期日になれば買戻し(=返済)が可能だと計画しているからこそ、
定期的に金利を支払ってでもお金を用立てたいので、
次に紹介する「割引債」と比較すると、
発行元の信用度や安定性が高い傾向にあると言えます。
しかし、
債券の購入はあくまで投資行為に当たるので、
決して元本保証の預金ではないという点だけは忘れてはいけません。
3.「割引債」はどのような債券なの?
「割引債」はゼロクーポン債とも呼ばれ、
額面金額よりも安く購入できる債券のことです。
例えば額面が100万円だとすると、
発行時に70万円や80万円などの割引価格で手に入れることができます。
もちろん支払期日(満期)になれば、
額面通りの100万円で買い戻してもらえるので、
この購入価格と額面の差額がそのまま利益になります。
(※その際に掛かる税金についても後ほど解説します!)
「利付債」が定期的に金利を得る為の債券なのに対し、
「割引債」は最初から安く購入することで、
最後にまとめて差額の利益を得る債券になります。
◉保有中に金利は発生しません!◉
割引債は支払期日まで所持していても、
途中でチャリンチャリンと入ってくる金利は一切受け取れません。
その代わりに、
額面より大幅に安く購入できるのです。
支払期日になって初めて、
大きな利益がまとめて得られるという仕組みです。
◉発行元の信用リスクには注意が必要◉
一般的に、
「割引債」を発行する企業等は、
最初にお金を受け取る時点では額面より安い金額しか手に入りません。
それでも資金調達をしたいというケースも含まれるため、
銘柄によっては利付債よりもリスク(信用リスク)が高い場合があります。
なお、
特例や公的な保護でも付いていない限り、
債券はその発行元が倒産してしまえば原則的に価値がなくなってしまいます。
この「発行元の倒産リスク」については、
利付債であれ割引債であれ、
購入前に必ずチェックしておくべき重要事項です。
4.それぞれのメリットとデメリット
「利付債」の場合、
国債は別格の安全性があるとしても、
その他の社債などの利付債でも比較的安定している投資手段と言えるでしょう。
ただし、
所持することで得られる金利は、
リスクを取っている割には定期預金より多少良いという程度の場合もあり、
元本保証が無いという点(繰り返しますが、国債は別です)を考えると、
定期預金との比較は慎重に行う必要があります。
つまり、
利付債は投資としては比較的ローリスク・ローリターンだと考えられますが、
それでもあくまで投資には変わらないので油断は禁物です。
◉「割引債」はハイリスクになりやすい傾向があります◉
対して「割引債」は、
最初から大きな確定利益(償還差益)を見込めるのが魅力です。
100万円の債券を80万円で購入すれば、
支払期日になれば自動的に20万円が差額として利益になります。
(※ここから税金が引かれます。)
利付債の場合もきちんと計算をすれば利益分は最初から見込めますが、
複利効果などを加味しない単純な比較では、
割引債の方が一度に得られるインパクトが大きいケースが多いです。
しかし、
特に信用力が十分でない発行体の割引債では、
高い利回りの裏側に「倒産リスク」が含まれている場合もあります。
割引債だからといって一概に危険なわけではありませんが、
一般的に利付債よりも価格変動が大きくなりやすいため、
仕組みをよく理解してから購入する必要があります。
5.税金もきちんと考えないといけません!
利付債、
割引債共に、
購入金額を上回った分(=購入したことで得られた利益)に対しては税金が掛かります。
現在は税制改正により、
特定公社債などの売却益や償還差益、
利子に対する税率は、
原則として20.315%(所得税・復興特別所得税・住民税)となっています。
※復興特別所得税の適用期間中(2037年まで)の税率です。
簡単な計算例を見てみましょう。
(※計算を単純にするため、約20%として考えます)
100万円の利付債で年利2%、
5年後が支払期日だとすると、
この債券を支払期日まで持っていればその5年間で10万円の利益になります。
これに対して約20%の税金が掛かるので、
手元に残る純粋な利益は8万円になります。
同じように100万円の額面の割引債を80万円で購入し、
支払期日が5年後だった場合、
その5年で得られる利益は20万円ですが、
約4万円の税金を徴収されるので純粋な利益は16万円です。
割引債には保有中の金利は発生しませんが、
購入金額と償還金額との差額利益(償還差益)には、
しっかり課税されることを覚えておきましょう。
◉特定口座なら損益通算も可能!◉
利子や償還差益・売却益は、
上場株式や投資信託の損益と「損益通算」が可能です。
「特定口座(源泉徴収あり)」を利用していれば、
口座の中で自動的に計算・納税が行われるため、
基本的には確定申告の手間は省けます。
ただし、
割引債の税金は、特定口座か一般口座かによって計算方法が異なります。
(一般口座では「みなし割引率」に基づいて源泉徴収される仕組みです)
少し複雑な部分ですので、
不安な場合は証券会社のサポートや税務署に確認することをおすすめします。
※なお、個人向け国債や多くの割引債は、現在のNISA制度の対象外となっているケースが一般的です。
6.支払期日までに売却する時には?
債券は購入して満期まで所持するものですが、
現金が必要になった場合などに、
所持している債券を市場で途中売却することもできます。
しかし、
支払期日まで持ち続けて初めて額面金額(100%)で戻ってくるのが債券のルールです。
支払期日を待たずに売却を行ってしまうと、
その時の市場価格(時価)での売却となるため、
「元本割れ」を起こして損をする可能性があります。
債券の途中売却には、
主に次のようなリスクがあることを知っておきましょう。
- 金利変動リスク:世の中の金利が上がると、債券価格は下がる傾向がある
- 信用リスク:発行元の経営状態が悪化すると、価格が下がる
- 流動性リスク:売りたい時に買い手がつかず、希望価格で売れないことがある
特に「割引債」の場合、
満期に向けて徐々に価値が上がっていく仕組みなので、
早期に売却すると期待通りの利益にならないことが多いです。
「債券は満期まで持てば額面で戻ってくる」
というのが最大の強みですので、
利付債であれ割引債であれ、
基本的には「途中売却せずに満期まで持ちきること」を前提に購入するのがおすすめです。
7.まとめ
割引債はリスクが高い分、
利付債より大きな利益を期待することができます。
しかし、
支払期日までに売却してしまうと利益が減ったり、
元本割れしたりするリスクがあります。
このような性質から、
「支払期日まで持ち続けても大丈夫だ」と判断できる発行元の債券を選ぶことが重要です。
利付債と割引債、
それぞれの特徴を理解して、
自分の投資スタイルに合った方を選んでみてください!
参照元:野村證券 | 利付債(証券用語解説集)
参照元:割引債 – Wikipedia