実は全然違う制度!
「税金の扶養」と「保険の扶養」
それぞれの壁と条件を解説
「扶養家族」という言葉、よく耳にする言葉ですね!
「扶養家族」は厳密に言うと、
2種類に分かれることはご存知でしょうか?
ちょっと分かりづらい2種類なのですが、
よく理解しておけば節税にも役立ちますし、
働き損で手取りが減ってしまう
なんて事態も防げます。
遠方に住む親の生活費を負担していた場合、
扶養に入れられる場合があるので、
結果として節税となるパターンもあります。
覚えておきたい!
「扶養家族」の種類と詳しい内容をご紹介します!
- ページ更新日:12月11日
1.扶養家族の種類
そもそも、「扶養」とはどういう意味なのでしょうか?
扶養とは、
自身の収入のみでは自活できない家族と生活を共にして、
その生活費を負担するという考え方のことです。
働き手本人の稼ぎから他者を養うため、
当然負担は大きくなります。
そういった理由から、
働く稼ぎ手の「税金」や、
保険料の支払いについての「控除」「免除」という仕組みがあります。
現在、
税法上の扶養家族という名のつく区分けには2種類の区分があります。
2つの扶養家族というのは・・
①・所得税上の扶養家族(税金の話)
②・社会保険上の扶養家族(保険証・年金の話)
特に配偶者のどちらかがサラリーマンで、
年末に人事から回ってきた書類にサインするだけ・・・、
というご家庭ではピンと来ないかもしれませんね。
しかし、
この二つには明確な違いがあります。
例えばどちらかの条件では「控除」「免除」がNGであることがあっても、
もう一方の条件ではOKであったりもするんです!
2.所得税法上の扶養家族について
◉所得税法上の扶養家族のメリットは?◉
所得税法上、
扶養家族に入ることのメリットは、生活費を負担している人間の税金が安くなることです。
例えば年収600万円の稼ぎがある旦那さんがいたとして、
奥さんが所得税上の扶養家族(配偶者控除)に入っていれば、
最大38万円の税金控除が受けられ、
旦那さんの課税対象となる所得が減ります。
その結果、
納める税金が安くなるんです。
これは扶養家族が増えたり、
奥さんの収入によっても変わってきます。
◉控除の対象となる家族は?◉
まず、
生活を共にする、
あるいは住居は別としてもその生活費の大部分を負担する親族が対象です。
親族とは、
配偶者、子供、6親等内の血族、
3親等内の婚族のことを指します。
奥さん、子ども、親、それから自分の兄弟やいとこ、
甥や姪、奥さんの甥や姪など、
かなり幅が広いことが分かります。
基本的には「生計を一にしている」必要がありますが、
大学などで遠方に住んでいる子供に仕送りをしているなど、
生活費の面倒を見ているケースもありますので、
この場合は扶養親族として認められます。
3.対象親族の所得制限を知っておこう
親族を扶養に入れるためには、扶養に入れたい対象人物の所得が基準を満たしている必要があります。
その区分けは、
配偶者か、
それ以外の親族かによって異なります。
近年の税制改正により、
いわゆる「年収の壁」のラインが大きく引き上げられています。
◉配偶者の場合:給与収入が約160万円以下なら満額控除◉
配偶者(奥さん等)の場合、
「配偶者特別控除」という大きな枠が設けられています。
現行制度では、
配偶者の給与年収がおおむね160万円以下であれば、夫側は最大38万円の控除を受けられるケースが多くなっています。
(※夫の合計所得金額が900万円以下であることが前提です)
以前は「150万円の壁」などと呼ばれていましたが、
現在はここが拡大しています。
ただし、
このラインを超えると段階的に控除額が減っていき、
最終的には控除がゼロになります。
また、
夫の年収が高い場合(合計所得900万円超〜)は、
配偶者の年収が低くても控除額が減額(26万円、13万円…)されていくため注意が必要です。
満額の38万円控除を受けたい場合は、夫の合計所得が900万円以下(給与収入で約1,095万円以下)である必要があります。
【妻自身の税金にも注意】
奥さん自身のパート収入に対して所得税がかかり始める目安も、
従来よく言われていた「103万円」から、
現在はおおむね160万円へと引き上げられています。
つまり、
同じ働き方でも「所得税がかかる/かからない」のラインが変わっている点には注意が必要です。
◉配偶者以外の親族の場合◉
子供や親などの場合はシンプルです。
年間の合計所得金額が58万円以下
(給与収入のみならおおむね123万円以下)
であれば、扶養親族の対象となります。
こちらも従来の「103万円」から枠が広がっています。
また、「扶養親族」は、
12月31日現在の段階で16歳以上であるという必要があります。
それ以下の子供は「年少扶養親族」と呼びます。
「年少扶養親族」には所得税の扶養控除は適用されませんが、
住民税の非課税限度額の算定には関係してきます。
4.社会保険上の扶養家族とは?
◉社会保険上の扶養家族のメリット◉
社会保険上の扶養家族のメリットとは、
いったいどのようなものなのでしょうか?
日本では、医療費を健康保険が7割負担してくれ、
受診者は残り3割を支払うというシステムになっています。
しかし当然、
この恩恵は保険に入っていなければ受けられません。
この時、社会保険上旦那さんの扶養家族になっていれば、
自分で保険料を払わずに、旦那さんが加入している社会保険(健康保険・厚生年金)に加入することができます。
しかも、保険料は旦那さん1人分。
旦那さんの給与額から決定されますので、
扶養家族が増えても減っても、
旦那さんの給与から天引きされる金額が増減することはありません。
(※国民健康保険の場合は人数割りなので増えますが、会社の社会保険は増えません)
しかし、ある一定の条件を超えて働くと、
自身で社会保険に入る必要が出てくるため、
その保険料は奥さんの給与から天引きとなります。
その結果、前より働いているのに、
社会保険料分で手取りが減ってしまう「働き損」
という事態にもなり得るのです。
◉社会保険上の「扶養親族」対象となる家族は?◉
所得税上の扶養親族と違い、
社会保険上の扶養親族の範囲はグッと狭まります。
また、
「同居」なのか「別居」なのかでも判定が分かれます。
その対象は、
3親等以内であることが大前提です。
その上で、
生計を共にしていれば同居の必要がない親族は以下になります。
・配偶者
・子
・孫
・兄弟姉妹
・父母
・祖父母
・曾祖母
(これ以外は、同居が必要です)
以前は兄弟姉妹は同居必須でしたが、
現在は別居でも仕送り等の事実があれば認められるようになりました。
逆に、
奥さん側のご両親(義父母)は同居の必要があります。
◉対象親族の所得制限について(106万・130万の壁)◉
社会保険の扶養には、
「106万円の壁」と「130万円の壁」が存在します。
税金の壁が160万円まで引き上げられても、
社会保険の壁は106万円・130万円のままですので注意が必要です。
まずは【106万円の壁】から解説します。
これは、
「社会保険上の扶養範囲内の年収ではあるが、
勤務先の規模によっては、
強制的に勤務先の社会保険に加入させられるライン」のことです。
2024年10月から対象範囲が拡大しています。
下記の条件をすべて満たす場合、
旦那さんの扶養を抜けて、
自分で社会保険料を払う必要があります。
・勤務先の従業員数が51人以上
・月額賃金が8.8万円以上(年収約106万円)
・週の所定労働時間が20時間以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない
※なお、106万円の壁については、今後「週の労働時間」などを基準にした仕組みに見直す方針も示されています。
次に【130万円の壁】です。
これは会社の規模に関係なく、
すべての人に適用される絶対的なラインです。
・年収が130万円以上になる見込み
(※月収換算で108,334円以上が続く場合)
この状態になると、
旦那さんの会社の健康保険組合から、
「扶養から外れてください」と言われてしまいます。
106万円の壁に当てはまらない人でも、
この130万円を超えると、
自分で国民健康保険・国民年金を払うか、
勤務先で社会保険に入れてもらう必要が出てきます。
※子ども(19歳以上23歳未満)の場合、社会保険の扶養にとどまれる年収の目安が「150万円未満」に緩和されているケースもあります。
5.まとめ
「扶養家族」と一口で言っても、
その内容を理解するのはなかなか難しいものです。
特に社会保険の適用拡大(106万円の壁)は、
従業員数51人以上の企業まで広がったため、
「知らぬ間に扶養抜けの対象になっていた!」
というケースも増えています。
所得税や住民税、
配偶者(特別)控除・扶養控除の「年収の壁」と、
社会保険の壁(106万・130万など)は別物です。
正しく理解して、
損のない健全なワークライフバランスを取りたいですね!
参照元:No.1191 配偶者控除|国税庁|公式サイト
参照元:No.1195 配偶者特別控除|国税庁|公式サイト
参照元:年収の壁・支援強化パッケージ|厚生労働省|公式サイト
参照元:短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の適用の拡大|日本年金機構|公式サイト