誓約書に法的な効力は?
念書・契約書との違いと書き方を解説
ビジネスシーンからプライベートな場面まで、
「誓約書」は、当事者間で「約束を守ること」を取り交わすための大切な書面です。
場合によっては、
会社への入社時や、個人間のトラブル解決の際に作成することもありますよね。
いざ誓約書を作成しなければならない場合、
どのような内容で、どういった書式で書けばよいのでしょうか?
誓約書の正しい書き方から、法的な効力、そして具体的な例文まで、
知っておきたい基本を分かりやすくご紹介します!
「誓約書」と「念書」・「契約書」の違いとは?
誓約書に法的な効力はある?
法的に有効・証拠となるケース
法律違反で無効になるケース
どんな時に使う?誓約書の主な種類
誓約書の書き方・基本のポイント
【例文サンプル】コピーして使える誓約書テンプレート2選
まとめ
参考リンク集
- ページ更新日:9月5日
「誓約書」と
「念書」・「契約書」の違いとは?
約束事を書面にする際、
「誓約書」の他にも「念書」や「契約書」といった言葉を耳にしますよね。
それぞれ役割が少し異なりますので、違いを理解しておきましょう。
誓約書・念書
「誓約書」と「念書」は、ほぼ同じ意味で使われます。
一言でいうと、
約束する側が、一方的に約束を守ることを誓い、相手に差し出す書類のことです。
会社や個人から要求された内容を遵守する、という意思を書面にして相手方が保管します。
後々のトラブルを防ぐ目的で作成されますが、法的な効力を持たないケースも多くあります。
契約書
「契約書」は、
当事者双方が合意した内容を記載し、お互いが署名・押印する書類です。
お互いが1通ずつ保管するのが一般的です。
「契約書」は会社に入社する時に雇用者と労働者の間で取り交わされたり、ビジネスの上で売る側と買う側との間で取り交わされることがあります。
誓約書と違い、契約書は法的な拘束力が非常に強く、
一度署名・押印すると、簡単には撤回できません。
誓約書に法的な効力はある?
「誓約書にサインしたら、絶対に守らないと訴えられるの?」
と不安に思う方もいるかもしれませんね。
結論から言うと、
会社と労働者の間で交わした一般的な誓約書は、
単なる約束事の合意書であり、
それ自体に強い法的な拘束力はありません。
誓約書の内容に納得できない場合は、
サインや押印をする必要はないのです。
ただし、内容によっては法的な証拠として効力を発揮する重要なケースもあります。
法的に有効・証拠となるケース
合法的な内容で作成された誓約書は、
裁判などで「約束があったこと」を証明する有効な証拠になります。
特に、以下のような内容は有効とみなされやすいです。
▶︎秘密保持に関する内容
在職中や退職後に、会社の機密情報を漏えいしないことを誓約させる内容
▶︎競業避止義務に関する内容
退職後、一定期間は競合他社へ就職しないなど、競業を避けることを誓約させる内容(※期間や範囲が合理的である場合に有効)
▶︎債務の承認や支払いに関する内容
慰謝料や貸金など、金銭の支払い義務があることを認め、その返済を誓約させる内容
▶︎就業規則の順守に関する内容
会社の従業員に対して就業規則を順守させる内容
▶︎貸与物の返還に関する内容
パソコンや制服など、会社からの貸与物を退職時に返還することを誓約させる内容
法律違反で無効になるケース
一方で、
いくら本人が署名・押印していても、
法律に違反するような、常識から逸脱した内容は無効となります。
▶︎労働基準法に違反する内容
「遅刻したら罰金」「残業代は請求しない」など、法律で定められた労働者の権利を侵害する約束。
▶︎損害賠償に関する不当な内容
「会社の備品を壊したら全額賠償します」など、労働者の責任範囲を超えた一方的な賠償を約束させる内容。
▶︎退職の自由を奪う内容
「退職する場合は、〇百万円支払う」といった高額な違約金や、「退職後、一生同業他社に転職しない」といった不合理な転職の制限。
▶︎憲法上の権利を侵害する内容
「会社を訴えません」と裁判を受ける権利を放棄させたり、「特定の思想を強制する」といった内容。
どんな時に使う?
誓約書の主な種類
誓約書には様々な種類があります。
ここでは代表的な5つのパターンをご紹介します。
会社の機密情報(顧客情報や技術情報など)を、
外部に漏らさないことを約束するために、主に入社時に提出します。
主に新卒採用などで、
内定者が「指定された日に入社します」と会社に約束するために提出します。
企業側が採用計画を円滑に進めるために求められます。
退職後も、在職中に知り得た会社の機密情報を漏らさないことを約束するために提出します。
離婚の際に、慰謝料や養育費などを分割で支払う側が、
「約束通りに支払います」と相手に誓約するために作成します。
支払いトラブルを防ぐ上で重要な証拠となります。
職場のセクハラ・ご近所トラブルなどの当事者が、
「今後は二度と迷惑行為をしません」と約束するために作成します。
誓約書の書き方
基本のポイント
誓約書の書き方に、法律で定められた厳格なフォーマットはありません。
しかし、後から「こんなはずじゃなかった」とならないために、
押さえておくべき7つの基本ポイントがあります。
①宛名(相手の名前)
まず最初に、誰に対して誓約するのかを明確にします。
相手の役職・氏名を正確に記載しましょう。
(例:株式会社〇〇 代表取締役 〇〇 〇〇 様)
②タイトル
本文の上部中央に「誓約書」や「念書」と、
何の書類か分かるように記載します。
③本文(誓約内容)
誓約書は、約束する側が一方的に誓うものなので、
「私は、貴社(あなた)に対し、以下の事項を遵守することを誓約いたします。」
のように、一人称の「私」を主語にして書くのが基本です。
挨拶文などは不要で、約束する内容を箇条書きなどで分かりやすく記載します。
「誰が、何を、どうするのか」を明確にすることが最も重要です。
④日付
いつ誓約したのかを証明する重要な項目です。
「令和〇年〇月〇日」のように、年月日を正確に記載しましょう。
⑤署名(自分の名前)
誓約する本人の住所・氏名を正確に記載します。
必ず自筆で署名するようにしましょう。
⑥押印
署名の横に押印します。認印でも構いませんが、
より文書の信頼性を高めるためには実印を使用するのが望ましいです。
⑦提出
誓約書は、誓約する人が相手に差し出すものです。
原本を相手に渡し、自分用にはコピーを保管しておくと安心です。
【例文サンプル】
コピーして使える誓約書
テンプレート2選
ここでは、日常で作成する可能性のある、
代表的な誓約書のフォーマットを2つご紹介します。
守秘義務に関する誓約書(入社時など)
例文 |
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株式会社 〇〇 代表取締役社長 〇〇 〇〇 様 誓約書
私は、以下の事項を厳守することを、ここに誓約いたします。 記
1.業務上知り得た、いかなる秘密情報(顧客情報、技術情報、その他一切の情報)に関しても、貴社の許可なく開示、漏洩、または私的利用をいたしません。 以上
令和〇年〇月〇日 住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号 |
金銭の支払いに関する誓約書(慰謝料など)
例文 |
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〇〇 〇〇 様
誓約書
私は、貴殿に対し、以下の事項を誠実に履行することを誓約いたします。 記
1.〇〇の件に関する慰謝料として、金〇〇〇万円の支払い義務があることを認めます。 以上
令和〇年〇月〇日 住所 〇〇県〇〇市〇丁目〇番〇号 |
まとめ
誓約書は、多くの場合、それ自体に強い法的な拘束力はありません。
有力な証拠となり、
約束の内容を明確にして、トラブルの際の「言った」「言わない」を防ぐ役割を果たします。
つまり、万が一のための「備え」と言えるでしょう。
誓約書を作成する時も、署名を求められた時も、
納得した上で取り扱うことが大切です。
この記事で解説した書き方のポイントや有効・無効になるケースを参考に、
内容をしっかりと理解して、安心できる誓約書を作成しましょう。
参考リンク集
公式サイト・サービス | 詳細 |
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法テラス 公式サイト | 国によって設立された法的トラブル解決の総合案内所。信頼できる情報が見つかります。 |
確かめよう労働条件(厚生労働省) | 入社時の誓約書など、労働に関するルールが公式情報で確認できます。 |