当時の世界標準に挑んだ
ソフトウェア処理に特化した日本発の暗号
クレジットカードの通信やデータの安全を守る技術。
その歴史の中で、日本が世界に誇る暗号がありました。
それが「FEAL(フィール)」です。
1980年代、世界的な規格に対抗する形で、
NTT(日本電信電話)によって生み出されました。
現在の高度なセキュリティ社会を築く、
「研究の教科書」ともなったこの暗号の歩みを、
最新の視点から分かりやすく解説します。
- ページ更新日:1月19日
1.FEAL(FEAL-8)の定義と誕生の背景
FEALは、1987年にNTTの研究員によって、
提案された共通鍵ブロック暗号です。
正式名称を「Fast Data Encipherment Algorithm」
と呼び、その名の通り「高速性」が特徴でした。
当時はハードウェア実装が主流だったDESに対し、
ソフトウェアでの高速処理を、
強く意識して設計されたのが最大の違いです。
2.なぜ速い?ソフトウェア実装に強い構造
FEALは、8ビットCPUなどの小規模なシステムで、
効率よく動くように設計されています。
CPUが得意な「算術演算」を組み合わせて、
圧倒的なスピードを実現しました。
この特性を活かし、国内の暗号FAXなど、
ソフトウェアで安全性を確保したい業務用途で、
実際に採用・活用が進んだのです。
3.進化の過程:FEAL-4からN段・NXへの拡張
FEALには、いくつかの発展形が存在します。
まず「FEAL-4(4段)」が公開され、
次いで安全性を高めた「FEAL-8(8段)」が登場。
さらに、解析技術の向上に合わせて、
段数を増やせる「FEAL-N」や、
鍵を長くした「FEAL-NX」へと拡張されました。
時代が求めるセキュリティ強度に合わせ、
柔軟に形を変えながら、日本の暗号技術をリードしました。
4.歴史的功績:現代の暗号解析を支えた存在
FEALは、世界中の暗号研究者が、
その突破に挑んだ代表的な対象でもありました。
この解析を通じて「差分解読法」や、
「線形解読法」といった、
現代の暗号解析技術が発展したのです。
現在は実運用の主役ではありませんが、
暗号の弱点を見つける研究において、
「最高の教科書」として、今も教育の場で語り継がれています。
5.まとめ
「FEAL(FEAL-8)」は、
日本の暗号開発史における輝かしい足跡です。
ソフトウェアに特化した高速性は、
黎明期のデジタル化を支える重要な原動力となりました。
現在は研究・教育用途での存在となりましたが、
日本発のアイデアが世界の知見を深めた功績は、
これからも高く評価されるべき事実です。