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破った紙切れの借用書でも有効?借用書の正しい書き方と注意点は?

【金銭トラブル防止】
借用書を作成する法的なメリット

  • ページ更新日:12月4日




1.借用書と似た書面に「金銭消費貸借契約書」がある

金銭消費貸借契約書は、
民法で定められた「消費貸借契約」を結んだことを証明する書面と言えます。

つまり消費貸借の要件である、
「借主が金銭を借りて、
同額を返す約束をし、
貸主が金銭を渡したこと」を記載することで効力を持ちます。

消費貸借契約書に一定の内容を記載し、
借主および貸主が納得した上で署名捺印をします。

実は借用書も内容自体は同じなのですが、
消費貸借契約書と異なる点は、
借主が記載内容を承認し、署名捺印した上で貸主に一方的に差し入れる点にあります。

対して消費貸借契約書は二通作成し、
貸主と借主がお互いに一通ずつ所有します。

訴訟になった際の効力は変わりませんが、
お互いが同一内容の書面を持つことで、
言った言わないの食い違いを防ぐ効果が期待できます。

2.借用書や金銭消費貸借契約書を有効にするには?

最低限の記載事項として、
民法に定められた要件は必須です。

当然、
借主と貸主の氏名を記載し、
誰と誰の間の貸し借りなのか、
契約の主体を明らかにします。

その上で、
借主が金銭を借りて返済する約束をしたこと、
およびお金を受け取ったことは明記しましょう。

返済約束を証明するには、
返済期日や返済方法を記載します。

しかし、
返済約束だけでは未だ契約は完了していません。

あくまでも、
お金を受け取った事実を証明する必要があります。

よって、
金銭を受け取った日付に加え、
借主が確かに金銭を受け取った事実を記載すると良いでしょう。

もちろん、
いくら受け取ったのか、
貸付金額の記載は忘れてはいけません。

借用書などの雛形(テンプレート)を見ると、
これ以外にも様々な記載内容を加えたものがありますが、
最低限これだけ記載すれば、
借用書として有効であり、
証拠にもなります。



3.利息を書いていなくても借用書は有効?

個人間の金銭消費貸借の場合、
原則として利息は請求できないとされています(民法第589条)。

したがって、
別途記載しなければ、
利息を請求することができません。

しかし、
一方が消費者金融や銀行などの金融機関であれば、
商法などの適用により当然に利息が発生するので、
記載がないからと借主が利息の支払いを拒むことはできません。

個人間の場合で利息の記載がないとしても、
金銭消費貸借契約の要件を満たす内容であれば、
貸したお金を返済すべき証拠になる点は変わりありません。

実務上は、
利息遅延損害金の割合を、
借用書や契約書に盛り込むのが通常でしょう。

ちなみに利息は、
元本に対して貸付期間に応じて発生する金銭なのに対し、
遅延損害金は、
返済が遅れたなど債務不履行の際に、
損害賠償として支払う金銭です。

遅延損害金は、
弁済期から返済が遅れた期間に比例して増加します。

なお、
個人間の貸し借りで利息の約束をしていない場合でも、
返済が遅れたときは、
民法が定める法定利率(現在は年3%・3年ごとの変動制)に基づく、
遅延損害金を請求できます。

本来、
損害の証明を貸主がしなくても発生するものですが、
借用書などに明記しておけば、
弁済が遅れたときなどに元本に加えて請求する際、
非常に有効です。

4.借用書の書き方で注意すべき点

契約書など、
記載内容をあとで都合よく書き換えられては困る書面は、
日頃用いられる漢数字ではなく、
大字(だいじ)と呼ばれる文字を用いましょう。

漢数字はたとえば「一」や「二」など、
簡単な線で成り立っているため、
上や間に契約後に線を入れて「二」や「三」、
あるいはもっと大きな数字に改ざんされる心配があります。

したがって、
「壱(一)」や「弐(二)」、「参(三)」といった大字を用い、
改ざんを防止します。

また金額の場合、
ここが先頭ですとの意味を込めて、
頭に「金」を入れるのも重要です。

「金壱拾萬円也」といった要領です。

この他、
貸主や借主が押印する際は、
できるだけ実印を押すようにしましょう。

実印は、
役場に登録した本人だけが押しうる印鑑であり、
第三者が押したとは考えにくいためです。

もし認印やサインのみならば、
借主が「自分は書いていない」と否認した場合に、
貸主が証明責任を果たす必要が生じ、
ハードルが上がってしまいます。



5.破れたメモ用紙に書いた借用書は無効?

先ほど説明したように、
借用書は記載内容によって効力を生じますし、
署名や捺印があれば、
より証拠の力は増します。

したがって、
借主が半ば冗談半分に破れたメモ用紙チラシの裏に、
金銭消費貸借契約の有効要件を記載し署名でもすると、
立派な借用書になります。

よほど信頼できる間柄ならまだしも、
面識がない人に対して、
安易に署名をすることは止めましょう。

借りてもない金銭の返済を請求されても、
署名していると、
証人となる第三者でもいない限り、
借用書のウソを証明するのが難しくなります。

これとは反対に、
借用書や金銭消費貸借契約書の証明力をより上げたいときは、
公正証書にすると良いでしょう。

公正証書を作成するには、
貸主と借主がともに公証役場に出向く必要があります。

単なる借用書などと違い、
金銭消費貸借契約のための公正証書(執行認諾文言付き)は効力が強く、
債務不履行の場合には、
裁判に訴えることなく強制執行が可能になります。

6.金銭消費貸借契約で利息を定めるときは「利息制限法」に注意する

よく「過払い金返還請求」の広告を見かけることがありますが、
あれは債務者が利息制限法上の上限利率に気付かずに返済を続けた場合、
上限を超えた分の返還を請求するものです。

もちろん、
元本および法定利率分の完済があって後のことではありますが、
その上限利率は貸付金額によって法律で定められています。

  • 貸付金額が10万円未満:年利20%
  • 10万円以上100万円未満:年利18%
  • 100万円以上:年利15%

以前は金融機関などから借りる場合、
出資法の制限に合わせることによって、
29.2%までのグレーゾーン金利が存在していましたが、
現在は利息制限法の上限利率に統一されています。

したがって、
契約内容を見直して上限金利を超えていると判断した場合は、
弁護士や司法書士などの専門家に相談すると良いでしょう。



7.債務者の返済に不安があるとき、期限の利益喪失の理由や保証人を記載する

期限の利益喪失事由とは何かといいますと、
債務者に一定の事由が生じた場合に、
債権者が一括返済を請求できるという取り決めです。

つまり、
債務者には返済期限まで返済しなくて良い利益(期限の利益)がありますが、
一定事由に該当することで、
返済期限を待たずに返済する義務が生じます。

民法で定められた事由とは、
債務者が破産手続き開始の決定を受けたり、
提供している担保を消滅させたり、
そもそも担保を提供しないときとされます。

しかし、
民法はよほど不合理な契約でない限り、
当事者が自由に内容を定めて良い(契約自由の原則)としますから、
さらに独自の期限の利益喪失事由を付け加えることができます。

たとえば割賦払い(分割払い)契約で、
「一回でも返済を怠ると、残額すべてを支払う」といった約款などです。

これにより債権者は、
債務不履行があった場合に備えることができます。

この他、
保証人を記載するのも契約の効力を高めます。

ただし、
重要な注意点があります。

一般に保証人は借主が準備し、
借用書などに記載しますが、
法律によれば保証人は貸主と契約するものであり、
しかも保証契約は書面で行わなければ無効となります(民法第446条)。

借用書内で借主が勝手に保証人の名前を書いただけでは、
効力はありません。

履行請求した時点で、
保証人が「知らない」と否定する可能性があります。

そうしたときに備えて、
保証人の氏名の横には、
必ず本人が署名し、
実印を押してもらいましょう。

金銭消費貸借の当事者と同様、
実印は本人の意思を示す重要なものですから、
認印では不十分です。




8.まとめ

借用書には決まった形式はなく、
法律上の要件を満たした内容が記載され、
署名や実印が押されていれば、
折込チラシの裏でも契約は成立します。

ただし、
借用書があるからといって、
公正証書でない限り直ちに強制執行ができるわけではなく、
あくまでも契約を証明するものに過ぎません。

後々のトラブルを防ぐためにも、
できるだけ契約当事者が納得できる、
しっかりとした書面で準備したいものです。

なお、
最近は紙の借用書だけでなく、
電子契約サービスを使って「電子借用書」として作成するケースも増えています。

電子署名法などに沿った形式であれば、
電子契約でも紙と同じような法的効力が認められます。

印紙代の節約や紛失リスクの低減にもつながるので、
金額や相手との関係によっては、
こうした方法も検討してみると良いでしょう。