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シンジケートローンの仕組みとは?メリット・デメリットをやさしく解説

シンジケートローンの仕組みとは?
基礎知識と流れを解説

普通に生活をしている中では、
シンジケートローン」という言葉はあまり出てきません。

しかし、
企業のトップや個人事業主にとっては、
資金調達の手段として耳にする言葉です。

名前だけ聞くと少し難しそうに感じる「シンジケートローン」とは、
一体どのようなものなのでしょうか?

経営者なら知っておきたい、
シンジケートローン」の特徴とメリット・デメリットをチェックしておきましょう!

  • ページ更新日:12月17




1.「シンジケートローン」とは?

シンジケートローン」は、
日本語で「協調融資」と訳される、
企業向けローンの一種です。

事業を運営・拡大するにあたり、
特に数億円単位の大口ローンを利用したいと思っても、
1つの銀行だけではリスク管理の観点から、
そう簡単に融資してくれません。

そのような時に、
複数の銀行が共同で企業や事業主に融資を行う仕組みのことです。

いくつかの銀行が集まった状態を「シンジケート団」と呼び、
大口のローン申し込みに対して共同出資で融資をします。

シンジケート団の中には、
とりまとめ役となる金融機関が存在します。

この中心となる金融機関は、
アレンジャー」(主幹事)と呼ばれます。

アレンジャーの役割は、
融資条件(金利や期間)を企業と調整して決めたり、
融資金額を参加する各銀行ごとに割り振ったりすることです。

また、
実際に融資期間中の事務方を請け負う金融機関を「エージェント」と呼びますが、
基本的には「アレンジャー」と「エージェント」には、
同一の銀行が立つことが多くなります。
(参照:三菱UFJ銀行

「シンジケートローン」の特徴は?

シンジケートローンの最も大きな特徴は、
一般的な企業に対する融資(相対融資)とは契約形態が異なる点です。

企業に対して各金融機関が個別に条件を設定するのではなく、
複数の金融機関が一つの企業に対して
「同じ条件」「同じ時期」に、「同じ契約書」により融資を行うという点が最大の特徴になります。

融資の条件はシンジケート団を構成する金融機関が話し合って合意しますが、
企業側が実際に連絡を取り合う窓口は、
アレンジャーである金融機関のみです。

複数の金融機関と個別にやり取りをする手間が省けて、
しかも合算すると、
単独の銀行からは借りられないような大口融資を受けられます。

また、金利の決定方法についても特徴があります。
市場の実勢を反映した「参照金利」をベースに決定されることが一般的です。

従来はLIBOR(ライボー)が使われていましたが、
現在はTIBOR(全銀協TIBOR)、
TONA(無担保コール翌日物金利)、
TORF(東京ターム物リスク・フリー・レート)などの指標にスプレッドを上乗せして設定されます。

シンジケートローンは多くの金融機関で取り扱っており、
みずほ銀行や三菱UFJ銀行、
三井住友銀行などのメガバンクはもちろん、
地方銀行も積極的に導入しています。

それだけ、
日本国内でも一般的な資金調達手段として定着しているのです。

企業側にとっての影響とは?

事業を大きく動かす時には、
当面の運転資金や設備資金を確保する必要があります。

シンジケートローンを利用すれば、
新工場の建設やM&Aなど大幅な事業拡大を行っても、
長期的にわたり安定した資金を確保できます。

3年、5年先まで見越したビジネスプランを組み立てることができるので、
会社の経営も安定するのです。

シンジケートローンは大口融資ですので、
もちろん厳しい審査基準が設定されています。

融資を申し込んで審査に通れば、
多数の銀行から信用された企業」という証明になり、
企業にとってはそれだけステイタス向上(対外的な信用の獲得)にも繋がります。

その後、
再度融資が必要になった時に、
シンジケートローンの審査に通過して完済したという履歴があれば、
個別に銀行から融資を受けやすくなる効果も期待できるのです。

ただし、
企業側にとってはシンジケートローンを受けると、
金利とは別に「手数料」が発生します。

アレンジャー」である金融機関は、
他のシンジケート団との調整役や窓口になってくれますが、
その対価として報酬(アレンジメントフィー等)が発生します。

この報酬がいくらになるのかも、
トータルのコストとして考えておく必要があるのです。



2.シンジケートローン契約の手続き

シンジケートローンを利用したいと思ったら、
まずは企業側からアクションを起こす必要があります。

「アレンジャー」を探して「マンデート」をする!

融資を受けるにあたり、
まずは取りまとめ役となる「アレンジャー」を引き受けてくれる金融機関を探さなければなりません。

通常は、
普段から付き合いのあるメインバンクに相談を持ちかけます。

引き受けてくれる銀行が見つかり、
正式に「シンジケートローンの組成」を依頼することを「マンデート」と呼びます。

アレンジャー」を依頼された銀行は、
契約条件が市場に見合っているかを検討して、
シンジケート団に参加する他の金融機関(インベスター)を募集します。

他に賛同してくれる銀行が見つかれば、
全員で契約書を取り交わします。

「アレンジャー」への手数料について

融資を受ける企業と、
アレンジャー」の銀行との間でマンデート契約を結ぶ時には、
一般的に「アレンジメント手数料」が発生します。

1つの金融機関が「アレンジャー兼エージェント」となる場合には、
全ての連絡や事務方の窓口が1つの銀行で執り行われます。

数十行の銀行を取りまとめるなど、
それだけ繁雑な作業が発生する為に、
金利とは別の手数料が必要になるのです。

融資の流れについて

シンジケートローンで融資を受ける時には、
エージェント」となっている銀行からまとめてお金が振り込まれます。
(※各行から個別に振り込まれるケースもありますが、管理はエージェントが行います)

そして企業が返済をする時には、
元金と利息をまとめて「エージェント」に入金をして、
エージェント」からシンジケート団の各銀行に分配して返済を行います。

アレンジャー・エージェント」は、
シンジケートローンを行う時には最も重要な役割をする金融機関なのです。

「アレンジャー」選びが大切です!

企業がシンジケートローンを成功させる為には、
アレンジャー」の能力(組成能力)が重要になります。

アレンジャー」が実績があり、
他の銀行からの信頼も厚い金融機関でないと、
条件の良いシンジケート団を募集しても集まりません。

苦労をして準備しても、
組成不能でムダに終わってしまうことさえあるのです。

通常「アレンジャー」がそのまま事務管理の「エージェント」を兼任するので、
企業にとってはまず「アレンジャー」選びがカギになります。

なるべく組成実績が豊富でネットワークの強い、
メガバンクや有力な地方銀行を選ぶことが大切です。



3.シンジケートローンの種類について

シンジケートローンには、
資金の受け取り方によって大きく分けて以下の3種類があります。

◉1・「コミットメントライン」

あらかじめ「融資枠」と「期間」を設定しておき、
その枠内であれば、
融資を受ける会社が請求するといつでもお金を借りられる契約です。

コミットメントライン」では、
すぐに使う予定がなくても、
万が一の時の資金不足に備える「お守り」として契約する場合や、
運転資金の効率化のために利用されます。

枠を確保していることに対して手数料がかかりますが、
安定した資金繰りが可能になります。

◉2・「タームローン」

タームローン」は、
証書貸付の形式で、
契約時に一括で融資金を受け取るタイプです。

長期的な運転資金や、
工場の建設、
大型機械の購入など設備投資に必要な財源として利用されます。

◉3・「コミット型タームローン」

タームローンでありながら、
コミットメントラインのように一定期間内であれば分割で借入れが可能なタイプです。

設備投資の支払時期が数ヶ月に分かれている」など、
明確な使用時期が分散していても、
あらかじめまとまった資金枠を確保しておきたいという場合に利用します。



4.シンジケートローンのメリット

シンジケートローンは、
企業と金融機関にとってどのようなメリットがあるのでしょうか?

①・複数の金融機関から「融資」を受けられる!

企業としては、
1つの金融機関に融資を依頼しても、
満足のいく金額を借りられるとは限りません。

それどころか、
取引期間が短かったり、
1行あたりの与信限度額を超えていると、
融資を断られてしまう可能性が高いのです。

しかしシンジケートローンにすれば、
参加する銀行1つあたりの融資負担額が少なくなるので、
大口であっても借入できる可能性が高まります。

②・「事務作業」が楽になる!

シンジケートローンでは、
アレンジャー兼エージェント」が取りまとめ役となり、
複数の金融機関と同じ条件で契約を結べます。

返済も「エージェント」の口座へまとめて振りこめば、
裏側で各金融機関に分配・返済をしてくれるのです。

銀行ごとに個別に返済手続きをする必要がなく、
経理担当者の事務作業が圧倒的に楽になります。

③・金利や条件が一本化できる!

個別に借りると、
銀行ごとに「A銀行は金利1.5%」「B銀行は1.8%」と条件がバラバラになり管理が大変です。

シンジケートローンならば、
すべての銀行との契約条件・金利が一本化できるため、
資金管理が非常にシンプルになります。

④・貸し倒れリスクの軽減(銀行側)!

金融機関にとってもメリットはあります。

1社に対して巨額の融資をすると、
万が一その企業が倒産した時のダメージが計り知れません。

シンジケートローンで複数の銀行で分担すれば、
1つの金融機関からの出資額が抑えられるので、
貸し倒れのリスクを分散(軽減)できるのです。

⑤・「余剰資金」が活用できる(銀行側)!

金融機関で貸出先に困っている余剰資金がある場合、
少しでも運用した方が収益に繋がります。

地方銀行などが都心の大企業のシンジケートローンに参加することで、
比較的低いリスクで利息収益を得られる機会になります。



5.シンジケートローンのデメリット

シンジケートローンには、
コストや契約の厳しさという面でデメリットもあります。

①・手数料が発生します!

シンジケートローンを受けるには、
金利以外に手数料が発生します。

* アレンジメント手数料(組成時)
* エージェント手数料(期間中毎年)

これらは決して安い金額ではないため、
金利メリットと手数料コストを天秤にかけて判断する必要があります。

②・ビジネスプランの内容が重視される

複数の金融機関に賛同(参加)してもらう為には、
この会社なら貸しても大丈夫」と思わせる、
説得力のある事業計画書や財務データが必要になります。

ディスクロージャー(情報開示)の透明性が強く求められます。

③・契約違反をすると罰則がある(コベナンツ)

ここが最も注意すべき点です。

シンジケートローンの契約書には、
コベナンツ(誓約条項)」という特約が盛り込まれることが一般的です。

コベナンツには様々な種類があります。

* 財務制限条項(赤字回避や純資産維持など)
* 報告義務(決算書や定期報告書の提出)
* ネガティブ・プレッジ(他の債務のために担保提供しないこと)
* 格付維持条項(信用格付を一定以上に保つこと)

この契約に違反(抵触)すると、
期限の利益を喪失し、
直ちに資金の一括返済を要求されたり、
金利が引き上げられたりするペナルティが発生します。

6.まとめ

シンジケートローンは、
企業にとって大口の融資を効率よく受けられる魅力的な資金調達手段です。

アレンジャーとなる銀行としっかり相談し、
メリット・デメリット(特に手数料とコベナンツ)を正しく理解して利用すれば、
会社の経営基盤を盤石にすることも可能です!

参照元:資金の調達 シンジケートローン : 三井住友銀行
参照元:コミットメントライン | みずほ銀行