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UATPとは?航空業界専門の決済ネットワーク仕組みと特徴を解説

世界初のチャージカード!
航空会社が設立した「UATP」のメリットとは?

「UATP」という言葉、
普段の生活ではあまり耳にしないかもしれません。

しかし、
クレジットカードの歴史や、
航空業界の裏側を知る上で非常に重要なキーワードです。

UATPは、
一般的なVisaやMastercardとは異なる、
航空業界に特化した独自の決済ネットワークです。

一体どのような仕組みで、誰が使っているのでしょうか?

UATPの基礎知識から、
その特徴や現代における役割まで、
詳しく解説していきます。

  • ページ更新日:12月2日




1.UATPの基礎知識

まずはUATPの基本的な情報について確認しましょう!

UATPは何の略?

UATPは、
Universal Air Travel Plan」の略称です。

日本語に直訳すると、
「世界航空旅行計画」といった意味合いになります。

これは、
世界の主要な航空会社が所有し、
運営しているグローバルな決済ネットワークのことを指します。

世界初のチャージカード

UATPの歴史は非常に古く、
設立は1936年にまで遡ります。

実は、世界で初めて発行されたチャージカード
(クレジットカードの原型)
として知られています。

当時は「Air Travel Card」と呼ばれていました。

現在私たちが使っているクレジットカードの仕組みの基礎を築いた、
歴史的な存在と言えるでしょう。

誰が使っているの?

UATPは基本的に、
一般個人向けのカードではありません。

主に、法人(企業)の出張用として利用されています。

航空会社が自社の法人顧客に対して「UATPカード」を発行し、
企業はそのカードを使って航空券などを購入します。

つまり、
BtoB(企業間取引)に特化した決済システムなのです。



2.UATPの仕組みと導入メリット

なぜ航空会社は独自のネットワークを作ったのでしょうか?
その仕組みとメリットを見てみましょう。

VisaやMastercardとの違い

私たちが普段使っているVisaやMastercardなどは、
「国際ブランド」と呼ばれる汎用的な決済ネットワークです。

これに対しUATPは、
航空会社同士をつなぐクローズドなネットワークです。

UATPカードでの決済は、
Visaなどの外部ネットワークを介さず、
UATPのネットワーク内で直接処理されます。

航空会社側のメリット:コスト削減

航空会社がUATPを導入する最大のメリットは、
手数料の削減です。

一般的なクレジットカードで航空券が購入されると、
航空会社はカード会社に対して数%の
「加盟店手数料(マーチャントフィー)」を支払う必要があります。

航空券は高額になることが多いため、
この手数料は航空会社にとって大きな負担です。

しかし、
自社がオーナーであるUATPネットワークを利用すれば、
外部に支払う手数料を大幅に抑えることができるのです。

これは、
利益率の低い航空業界において非常に大きな意味を持ちます。

利用企業側のメリット:データ管理

UATPカードを利用する企業側にもメリットがあります。

それは、
詳細な旅行データを取得できる点です。

UATPのシステムは、
単なる決済金額だけでなく、
「誰が、いつ、どの便名で、どのクラスで移動したか」
といった詳細な旅程情報(レベルⅢデータ)を決済データと紐付けて管理できます。

これにより、
企業の経理担当者は出張費の管理や分析が非常に容易になります。

多くのグローバル企業が、
出張経費管理のためにUATPを採用している理由がここにあります。



3.主要な加盟航空会社と現状

どんな航空会社がUATPに参加しているのでしょうか?最新の状況を確認します。

世界の主要航空会社が出資・参加

UATPは、
世界の主要な航空会社が共同で出資し、
運営に参加しています。

航空業界の再編や合併により、
その顔ぶれは時代とともに変化してきました。

現在の主要なメンバーには、
以下のような航空会社が名を連ねています。

* アメリカン航空
* デルタ航空
* ユナイテッド航空
* ルフトハンザドイツ航空
* ブリティッシュ・エアウェイズ
* カンタス航空
* スカンジナビア航空(SAS)
* 日本航空(JAL)
* など

かつて名を連ねていたコンチネンタル航空やUSエアウェイズなどは、
合併により現在は存在しませんが、
そのネットワークは引き継がれています。

現在では260社以上の航空会社や旅行関連企業が、
UATPネットワークに加盟しています。

日本での状況

日本では、
日本航空(JAL)がUATPのメンバーとしてネットワークに参加しています。

JALでは法人顧客向けに、
UATPネットワークを利用した決済ソリューションを提供しています。

日本の一般的なビジネスマンが直接UATPカードを目にすることは少ないですが、
企業の管理部門などでは利用されているケースがあります。



4.現代におけるUATPの役割

歴史あるUATPですが、現代では新しい役割も担っています。

代替決済(APM)との連携ハブ

近年、
決済方法は多様化しており、
クレジットカード以外にも様々な支払い手段が登場しています。

* PayPal(ペイパル)
* Alipay(アリペイ)
* WeChat Pay(ウィーチャットペイ)
* など

これらは「代替決済手段(Alternative Payment Methods:APM)」と呼ばれます。

航空会社がこれらの新しい決済方法を個別に導入しようとすると、
システム開発や契約に多大な手間とコストがかかります。

そこでUATPは、
航空会社とこれらの代替決済サービスをつなぐ
ハブ」としての役割
を強化しています。

航空会社はUATPと接続するだけで、
PayPalやAlipayなど、
世界中の多様な決済手段をまとめて導入できるようになるのです。

古い歴史を持ちながら、
最新の決済トレンドにも対応している点が、
UATPの強みと言えるでしょう。



5.まとめ

UATPについてのまとめ

UATPは、
1936年に誕生した世界初のチャージカードを起源とする、
航空会社による、航空会社のための決済ネットワークです。

一般の消費者が直接使う機会はほとんどありませんが、
法人向けの出張決済システムとして、
世界中のグローバル企業で利用されています。

航空会社にとっては、
VisaやMastercardなどに支払う高額な手数料を削減できるという大きなメリットがあります。

また現代では、
PayPalなどの新しい決済手段を航空業界につなぐ重要な役割も担っています。

普段は意識することのない「UATP」ですが、
世界の空の旅を裏側で支えている、
なくてはならない金融インフラの一つなのです。

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